アレクサンダーマックイーン:“サベージビューティー”リポート
昨日、アロハラグチームはメトロポリタン美術館で開かれているアレクサンダーマックイーンの"サベージビューティー"に足を運んできました。列に並んでいる間には、彼が強くインスパイアされたと思われる19世紀のヨーロッパ絵画やメソポタミアのジュエリーが見られるので、期待はピークに高まります。
セイントマーティン時代の作品から世を去る最後のクリエイションまで、圧巻する作品の数々が並ぶ光景は、自分の中にある知覚をフルに活用するプレゼンテーションでした。意表をつく素材のチョイスから建設的なシルエットに至るまで、ランウェイの中で投影される陰や光を厳密に計算した、シアターにも通じる壮大なショーピースたち。そのひとつひとつの作品の存在感は、実際目の前にすると胸が締め付けられ畏怖すら感じました。トレンドのコマーシャルな要素を極限まで省いたマックイーンの世界観は、本人の思想や精神と強くむすびついた、とことん個人的でエモーショナルなもの。それがハイファッションからメインストリームに至るまで指示されているというのが、彼が死や闇に対する恐怖という誰しもが持つ普遍的なテーマを扱ってきたことにあるのかもしれません。作品を見ていて強く感じたのは、彼の背景には強力なチームワークが確実にあったということ。究極のビジョンを理解し、それを実現しバックアップする技術者がいて、マックイーンが様々なアーティストの強力のもと、ひとつの世界を作り上げることに全霊を注いだことが伝わってきます。
彼の一環した女性像に見えるものは「戦士」。どのコレクションにもこの通ずるテーマから浮かび上がってくるのは、立ち向かい、孤高と戦う女性たちです。そこには自信があり、意志があり、そして恐怖もある。その女性たちを着飾る鎧となり、時としてかばうように守っているのがマックイーンのクチュールでした。アロハラグでは、過去数年にわたってマックイーンのメンズコレクションを展開してきましたが、ショーのテーマを、より日常的な洋服に噛み砕いて発表していたマックイーンは、身につけるだけで着ている人をスペシャルな気持ちにする、特別なデザイナーでした。
彼の死を惜しむ声は後を絶ちませんが、見終わったあと、彼は出せるものを全て出し切ってこの世を去ったんだな、と不思議と納得する気持ちがありました。ファッションが好きな人も、スポーツや音楽が好きな人でも、誰もがあの出口を出たあと、マックイーンの創造力に素直に感嘆し、感謝できるエクシビションだと思います。ニューヨークに来られる予定のある方、ニューヨークに住んでいる方、皆さんぜひお時間を作って、足をお運び下さい。 エクシビションは7月31日まで行われています。